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『生と死の境界線』    岩井 寛口述:松岡正剛著       講談社:1988


小土井 直美教授 (人間科学部児童学科)

社会人になって数年したころ、たまたま友人とスキーに行き、 民宿で朝読み始めたらやめられなくて夕方友人が帰ってくるまで読みふけってしまった本です。 岩井寛というある精神医学者が末期癌の病床で、 口述筆記させたものを死後インタビュアーがまとめて出版しました。 「生きるということは、 意味の実現に賭けることです」と言い、 人間を人間であらしめるものは「意識」であると、 意識水準をさげる一切の医療処置を拒否して、 生と死の境界線上で自己を見つめ、 単なる闘病記や告白録ではなくそれを広く精神の科学の体系のなかに位置づけた本です。 少し専門的で難解な所もありますが、折にふれ、手にしてみたくなる一冊です。