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『貴門胤裔』    葉広岑著;吉田富夫訳       中央公論新社:2002


佐久間 貴士教授 (学芸学部日本文化史学科)

清朝の皇后を多数輩出した名門貴族が、清朝崩壊後に辿った栄光と苦難の歴史を描いた長編小説。 西太后を大伯母にもつ葉女史の一家がモデルとなっており、14人の兄弟姉妹と大家族の数奇な生き様が描かれている。 一族は中華民国時代には大貴族の余韻を保っていたが、文化大革命時には、旧支配階級として糾弾された。 こうした貴族の近現代史をテーマにした小説はこれまでになく、中国では最も権威のある賞の一つである魯迅文学賞を受賞した。

著者は1948年生まれ。 父親が60歳の時の第三夫人の子。 長兄とは36歳の年の差があった。 色々な職業についた後、1990年千葉大学留学。 帰国後創作に専念。

訳者吉田氏は、本書は「<貴種>に生まれた彼女自身のルーツを探す旅であるとともに、中華民族の有り様を根底から問い直す旅でもありました」と述べている。吉 田氏の漢詩訳文も珠玉である。