展示

『異邦人』(新潮文庫) カミュ, アルベール著;窪田 啓作 訳  新潮社:1951


歌野 博教授 (人間科学部教養教育)

「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私にはわからない」

 この有名な書き出しと、「私ははじめて、世界の優しい無関心に、心をひらいた」なる末尾近くの一行の間に、「太陽のせい」で殺人を犯した主人公ムルソー、 死刑判決を無感動に受け入れるムルソー、 教誨司祭を拒否し面罵するムルソーの不条理のフォークロアがはさまれる。 幸か不幸か、政治の季節に学生時代を駆け抜け世代の心性に、 ムルソーの内的世界が二重写しになり、何度も読み返させた作品です。