展示

「スコットランド 歴史を歩く」 

高橋 哲雄

岩波書店  2004

:080||I95||O-895(392449B)

関屋:080||I95||O-895(392924I)

 

青柳 正也(被服学科)

 

「イングランドでは名馬が育ち、スコットランドでは人材が育った・・」というフレーズに惹かれ読み進めるうちに、スコットランドのあたらしい誕生、再生の壮大な物語に深い感銘を覚えた。著者はイギリス近代史専攻。現地を踏査し得た知見と感慨をもとに記述を進める。スコットランドは中世以来ハイランドとローランドの、二つの国ともいうべき地域的分裂状態にありながら、同時にフランスとイングランドという二つの大国のはざまにあって、基本的には親仏路線を維持してイングランドの侵略を免れてきた。この小国がイングランドに併合されてからもスコットランド系住民がいかにアイデンティティを確立して18世紀「スコットランド啓蒙」と世界的に影響を与えた<知>と<実>の人材を輩出し遠くはなれた日本の近代化にも深いかかわりを持つことを教えてくれる。人材育成という最も大切な課題に対し宗教、芸術、科学、経済などさまざまな視点から深い示唆を与えてくれる書である。