展示

「『ホームレス』襲撃事件“弱者いじめ”の連鎖を断つ」

北村 年子

太郎次郎社 2001

小阪:915.9||K7(358777B)

 

  福田 敦志(学芸学部 一般教育)

 

1995年10月18日。戎橋の上から道頓堀川へと、一人の「野宿労働者」の命が消えていった。この事件の主犯として、一人の青年が浮かび上がる。彼は、かつて「いじめられっ子」だった。「野宿労働者」と同じ境遇を身を持って知ってもいた。だが、彼は自分よりさらに弱い立場にいた一人の人間を、死に至らしめた。

弱い立場に置かれつづけてきた者が、さらに弱い立場にいる他者に攻撃を加え、自己の刹那的な安定を求めようとし、あまつさえ、命さえをも奪っていく。

「弱者いじめの連鎖」にとらわれた青年の姿は、私たち自身の姿ではないのか。

いったいなぜ、「弱者いじめ」は連鎖してしまうのか。その連鎖を断ち切る術はないのか。

本書との対話を通して、これらの問いへの自分なりの答えを探してほしい。そして本書に刻み込まれている、絶望的状況のなかでなお消えない希望の物語を読みひらいていってほしい。