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「なぜ記憶が消えるのか--神経病理学者が見た不思議な世

ハロルド・クローアンズ著  鴻巣 友季子訳

白揚社 1989
[発注中]

 

川上 正浩心理学科)

 

 著者のハロルド・クローアンズは、神経内科のお医者さんで、悲劇的な遺伝病として知られているハンティントン病の権威。そしてこの本は、手術中に突然記憶がなくなった外科医、指揮棒が振れなくなった偉大な指揮者、などの患者が示すさまざまな症状を、分析的に診断していく過程を中心に綴られたエッセイです。この診断の過程、理詰めに理詰めを重ねた感じで(たとえば、「患者の症状から4つの病気が考えられる。この患者には、この症状がないからこの疾患はあり得ない。また別の症状から推定すると神経のここがやられている可能性が高い。……だから病名は○○しかありえない。」といった具合)、専門的な知識が増えるだけでなく、まるで推理小説を読んでいるような知的興奮を味わうことができます。