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「人間の土地」

アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ著、堀口 大學訳

新潮社 1972(新潮文庫)

関屋:B||S1||2(336953G)

佐藤 達郎(日本文化史学科)

 

『星の王子様』の詩人は、人類が本格的に空に乗り出した時期、航空路の開拓に従事した「空を耕す人」でもあった。本書は、そんな著者の実体験に基づく思索的エッセイ。雪に閉ざされた標高5000mのアンデス山中から奇跡の生還を遂げた僚友ギヨメや、炎熱のサハラ砂漠に不時着し、三日間の彷徨ののち生還した著者らの不屈の行動を支えたものは何だったか。人とのきずなを信じる力を与えてくれる一冊。空にロマンを求め続けた著者は、第二次世界大戦中、偵察飛行に出たまま消息を絶ったが、今年その機体が地中海で発見された。

●小阪:三笠書房刊を所蔵 908||G3||7044087G

 

 


「極北の動物誌」

ウィリアム・プルーイット著、岩本 正恵訳

新潮社 2002

 482.539||P95(393051D)


    佐藤 達郎(日本文化史学科)

 

  核開発による環境破壊を告発してアメリカを追われた生態学者による、アラスカ版『沈黙の春』。北極圏の静謐な大地と、そこに生きる動物たちの生態系を描いた精密な自然描写は、科学的でありながら詩のように美しい。厳しい自然の中で巧妙なバランスの上に成り立つ動物界、またそれらと共存してきた人々の伝統的な暮らしが、近代文明の導入によって破壊されていくさまは、環境と文化との関わりを私たちに問いかける。訳文も秀逸。