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「あのころはフリードリヒがいた」

H.P.リヒター、上田 真而子訳

岩波書店 2003他

関屋:909.8||I2(370052G)

小阪:909.8||I1||3-520(276648F)

関屋:909.8||I2||30(205671C)

小阪:909.8||I2||27(052872C)

小阪:943.8||R!(108529)

 

  徳永 正直(人間科学部 教養教育)

 

本書は中学生向けに翻訳されたのであるが、人権や平和の問題を考えるために、大人が読んでも十分な内容を持っている。ナチスの暴力支配が、ドイツ人である著者にとっても、深刻なトラウマになっていることが痛感される。ユダヤ人の親友・フリードリヒとドイツ人である僕との交流を描いた作品であるが、ユダヤ人に対する迫害がますますひどくなっていく中にあって、親友のために何もできない僕の無力さと深い悲しみが見事に描き出されている。この本をきっかけにして、ヘルトリングの『遅ればせの愛』等のドイツの児童文学に触れて、「人間の偉大と卑小」をリアルに感じ取ることは、読者の人間理解を深めることにも大いに貢献するであろう。