展示

「茶 色 の 朝」

フランク・パヴロフ 大月書店 2003年
 
黒田 伊彦(教養教育)

 最近フランスで、外国人移民への差別や排除を正当化するナチス的な政治勢力が、 地方議会に進出しています。 この状況に危機感を持った著者が、 1998年に刊行した11頁・1ユーロ(約146円)の小冊子の訳本です。
 「茶色の猫や犬しか飼ってはいけない」という法律が実施され、 「犬や猫位ならまあいいや」と従っていると、 この法律を批判した新聞が次々と廃刊に追い込まれ、 「茶色新報」一紙のみになり、更に前に茶色以外の犬や猫を飼っていた者は、 自警団により摘発され、国家反逆罪で警察に引張られていく。 最初に反対しておいたら良かったと後悔しても後の祭。 前に黒い犬を飼っていた主人公のところに自警団がやってきた。 「だれかがドアをたたいている。陽はまだ昇っていない。外は茶色」 でこの寓話は終わっています。
 茶色はヒットラーのナチス親衛隊の制服の色なのです。 著者はフランスとブルガリアの国籍を持つ児童心理学者です。
 明るさの中の不安な気分を、スケッチ風の花や人物で淡彩画で、 ヴィンセント・ギャロが描き、東京大学大学院高橋哲哉教授が、 今の日本の状況に合わせて、 これ位なら安心と「やり過さないこと」「考えつづけること」と14頁にわたって解説しています。
 今の私達への警告の書といえるでしょう。
関屋 : 953||P6 (416593E)

目次へ
書名索引へ