展示

「散るぞ悲しき : 硫黄島総指揮官・栗林忠道」

梯久美子 新潮社 2005年
 
武田 雅子(英米文学科)

 太平洋戦争の激戦地であった硫黄島——戦後わずかな生き残りが、 「硫黄島で戦った」と言うとアメリカ人が身を正したといいます。 その指揮官は軍部からの作戦がいたずらに兵隊を死地に追いやったとして、 「散るぞ悲しき……」と歌を残しますが、 抗議を感じ取った軍中枢部により「散るぞ口惜し」と変えられてしまいます。 このことを知った著者は、 栗林中将がこの歌にこめた意味を探るうち、 戦いの中からも家族を思う手紙をまめに書き、 兵を大切にした「品格」の人を見出すことになります。 近鉄の中で読みながら、涙をこらえるのに苦労しました。 そして、今もイラクで、このようなすばらしい人格が失われていること、 いつも人類が戦争をしてきたことなど考えずにいられませんでした。 特記すべきことは、この本が戦争を知らない世代の人、 しかも女性によって書かれていることです。 人類は愚かでも、希望だけは捨ててはならない……のかも。
小阪:289.1||Ka24 (414247B)

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