展示

田辺聖子  関西の庶民の生活をやわらかに描く  樟蔭の大先輩

場所:図書館
期間:1995年4月


 田辺聖子さんは樟蔭女子専門学校国文科の出身です。

 学生の頃からガリ刷りの雑誌を作ったり、すでに作家としての活動をされていました。

 昭和31年に『虹』で大阪市民文芸賞を、 昭和39年には『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニー)』で芥川賞を受賞。 その時すでに、大阪弁のもつやわらかさを巧みに用いた独特の文体を確立されています。

 大阪弁で庶民の生活を描くとともに、 古典を題材とした小説やエッセー、 伝記小説などすぐれた作品を数多く執筆。 氏の作品には、人生の妙味を軽快に語りつつ、 しかもその底に透徹な批評が込められています。


略歴

 昭和3年3月27日、大阪に生まれる。 父は写真館を営業していたが、映画愛好家であり、 母は読書好きであったため、芸術愛好心を両親から受けた。 昭和19年樟蔭女子専門学校国文科に入学。 20年ころより卒業までガリ版刷りの同人誌を作ったりしたが、 戦後のことで活発には活動できなかった。 22年同校をを卒業。 30年ころより同人誌『文芸首都』の同人たちで作っていた同人誌『航路』に参加。 31年「虹」で大阪市民文芸賞を受賞。 33年『婦人生活』に100枚の長編「花狩」を応募、 佳作となり、翌年1年間連載される。 35年大阪文学学校の第4期生として、夜間講義を約半年聴講する。 同期には小野十三郎らがいた。 詩人の足立巻一氏が指導にあたった。 すでにこのころよりラジオ、テレビのドラマのシナリオを執筆していた。 テレビでは主に「東芝日曜劇場」を担当した。 39年「感傷旅行」で芥川賞を受賞。 以来、小説。エッセーに多作を続ける。
(『戦後作家の履歴」至文堂)

受賞経歴

大阪市民文芸大賞(1956年) 『虹』
「婦人生活」懸賞小説当選 『花狩』
第50回芥川賞(1964年) 『感傷旅行』
大阪芸術賞(1976年)
兵庫県文化賞(1982年)
第26回女流文学賞(1987年) 『花衣ぬぐやまつわる・・・』
第10回日本文芸大賞(1990年)
第27回吉川英治文学賞(1993年) 『ひねくれ一茶』
第42回菊池寛賞 (1994年) 幅広く多彩な文筆活動と『ひねくれ一茶』などの評伝作品

田辺聖子著作目録

(1995年3月末日現在大阪樟蔭女子大学図書館所蔵)


小説

花狩 東都書房 1958
花狩 (中公文庫) 中央公論社 1975
感傷旅行 文芸春秋 1964
ここだけの女の話 新潮社 1970
ここだけの女の話 (新潮文庫) 新潮社 1975
女の日時計 読売新聞社 1970
浮舟寺 毎日新聞社 1971
貞女の日記 中央公論社 1971
もと夫婦 講談社 1971
あかん男 読売新聞社 1971
窓を開けますか? 新潮社 1972
すべってころんで 朝日新聞社 1973
猫も杓子も 文芸春秋 1973
鬼たちの声 文芸春秋 1974
言い寄る 文芸春秋 1974
中年の眼にも涙 文芸春秋 1974
無常ソング —小説・冠婚葬祭— 講談社 1974
夜あけのさよなら 新潮社 1974
花婿読本 番町書房 1974
求婚旅行 下 サンケイ新聞社出版局 1974
ほとけの心は妻ごころ 実業之日本社 1974
女の食卓 講談社 1975
うたかた 講談社 1975
夕ごはんたべた? 上・下 講談社 1975
甘い関係 文芸春秋 1975
私の大阪八景 文芸春秋 1975
愛の風見鶏 大和出版 1976
愛の風見鶏 (集英社文庫) 集英社 1977
休暇は終った 新潮社 1976
朝ごはんぬき? 実業之日本社 1976
妾宅・本宅 —小説・人生相談— 講談社 1976
私的生活 講談社 1976
隼別王子の叛乱 中央公論社 1977
浜辺先生町を行く 文芸春秋 1977
お聖どん・アドベンチャー 徳間書店 1977
鬼の女房 角川書店 1977
世間知らず 講談社 1977
人間ぎらい 新潮社 1978
三十すぎのぼたん雪 実業之日本社 1978
愛の幻滅 光文社 1978
中年ちゃらんぽらん 講談社 1978
孤独な夜のココア 新潮社 1978
愛してよろしいですか? 集英社 1979
男の城 講談社 1979
魚は水に女は家に 新潮社 1979
スヌー物語 —浜辺先生ぶーらぶら— 文芸春秋 1979
日毎の美女 —新・醜女の日記— 講談社 1979
蝶花嬉遊図 講談社 1980
オムライスはお好き? 光文社 1980
姥ざかり 新潮社 1981
おんな商売 講談社 1981
お目にかかれて満足です 中央公論社 1982
苺をつぶしながら —新・私的生活— 講談社 1981
田辺聖子長編全集 1〜18 文芸春秋 1981-82
風をください 集英社 1982
返事はあした 集英社 1983
ダンスと空想 文芸春秋 1983
姥ときめき 新潮社 1983
恋にあっぷあっぷ 光文社 1984
はじめに慈悲ありき 文芸春秋 1984
宮本武蔵をくどく法 講談社 1985
ジョゼと虎と魚たち 角川書店 1985
ベッドの思惑 実業之日本社 1985
どんぐりのリボン 講談社 1986
嫌妻権 光文社 1986
春情蛸の足 講談社 1987
姥うかれ 講談社 1987
私本・いそっぷ物語 —おせいさんのイソップ噺— 講談社 1987
ときがたりデカメロン (講談社文庫) 講談社 1987
九時まで待って 集英社 1988
不機嫌な恋人 角川書店 1988
ブス愚痴録 文芸春秋 1989
うつつを抜かして —オトナの関係— 文芸春秋 1989
不倫は家庭の常備薬 講談社 1989
結婚ぎらい 光文社 1989
薔薇の雨 中央公論社 1989
どこ吹く風 —男と女の新フレンド事情— 実業之日本社 1989
夢のように日は過ぎて 新潮社 1990
お気に入りの孤独 集英社 1991
よかった、会えて —ユーモア小説集— 実業之日本社 1992
金魚のうろこ 集英社 1992
おかあさん疲れたよ 上・下 講談社 1992
田辺聖子珠玉短編集 1〜6 角川書店 1993
姥勝手 新潮社 1993
愛のレンタル 文芸春秋 1993
週末の鬱金香 中央公論社 1994
夢渦巻 集英社 1994

エッセー

女の長風呂 正・続 文芸春秋 1973-74
言うたらなんやけど 正・続 筑摩書房 1973-76
イブのおくれ毛 正・続 文芸春秋 1975-76
篭にりんご テーブルにお茶… 主婦の友社 1975
女が愛に生きるとき 講談社 1976
ラーメン煮えたもご存じない 新潮社 1977
ああカモカのおっちゃん 1・2 文芸春秋 1977
男はころり女はごろり 青春出版社 1977
おセイさんのほろ酔い対談 講談社 1977
カモカのおっちゃん興味しんしん 1・2 文芸春秋 1978-79
芋たこ長電話 文芸春秋 1980
おせいカモカの対談集 海竜社 1981
女の居酒屋 文芸春秋 1981
歳月切符 筑摩書房 1982
女の気まま運転 —カモカ・シリーズ2— (文春文庫) 文芸春秋 1982
女の停車場 —カモカ・シリーズ3— (文春文庫) 文芸春秋 1982
女のハイウェイ —カモカ・シリーズ4— (文春文庫) 文芸春秋 1983
いっしょにお茶を 角川書店 1983
女の口髭 文芸春秋 1983
夢の菓子をたべて —わが愛の宝塚— 講談社 1976
しんこ細工の猿や雉 文芸春秋 1984
おせいさんの団子鼻 講談社 1984
女の幕ノ内弁当 文芸春秋 1984
女の中年かるた 文芸春秋 1985
死なないで 筑摩書房 1985
男の結び目 (女性の本棚シリーズ 佐藤愛子共著) 大和書房 1985
笑談笑発 —井上ひさし対談集— (講談社文庫) 講談社 1985
星を撒く 角川書店 1986
浪花ままごと 文芸春秋 1986
ほのかに白粉の匂い —新・女が愛に生きるとき— 講談社 1986
猫なで日記 —私の創作ノート 集英社 1987
女のとおせんぼ 文芸春秋 1987
ぼちぼち草子 岩波書店 1988
性分でんねん 筑摩書房 1989
天窓に雀のあしあと 中央公論社 1990
乗り換えの多い旅 暮しの手帖社 1992
ほととぎすを待ちながら —好きな本とのめぐりあい— 中央公論社 1992

古典を素材にして

文車日記 —私の古典散歩— 新潮社 1974
小町盛衰抄 —歴史散歩私記— 文芸春秋 1975
舞え舞え蝸牛 —新・落窪物語— 文芸春秋 1977
新源氏物語 1〜5 新潮社 1977-78
絵草紙 源氏物語 岡田嘉夫・絵 角川書店 1979
絵草紙 源氏物語 (角川文庫) 岡田嘉夫・絵 角川書店 1984
私本源氏物語 実業之日本社 1980
花 —源氏物語— 相馬大共著 浅野喜市写真  光村推古書院 1980
竹取物語・伊勢物語 (現代語訳日本の古典4) 学研 1980
源氏紙風船 新潮社 1981
お伽草子  たなばた物語 集英社 1982
むかし・あけぼの —小説枕草子— 角川書店 1983
田辺聖子が語る落窪物語 (かたりべ草子2) 平凡社 1983
新・私本源氏 春のめざめは紫の巻 実業之日本社 1983
枕草子・蜻蛉日記 —グラフィック版— (特選日本の古典4) 世界文化社 1986
田辺聖子の古事記 (わたしの古典1) 集英社 1986
田辺聖子の小倉百人一首 岡田嘉夫・絵 角川書店 1986
田辺聖子の小倉百人一首 続 岡田嘉夫・絵 角川書店 1987
恋のからたち垣の巻 —異本源氏物語— 実業之日本社 1987
田辺聖子と読む蜻蛉日記 創元社 1988
古典の森へ —田辺聖子の誘う— 工藤直子共著 集英社 1988
写真 花 源氏物語 相馬大共著 浅野喜市写真 光村推古書院 1988
田辺聖子の小倉百人一首 角川書店 1989
おくのほそ道 (古典の旅11) 講談社 1989
『源氏物語』の男たち —ミスター・ゲンジの生活と意見— 岩波書店 1990
新源氏物語 霧ふかき宇治の恋 新潮社 1990
今昔物語絵双紙 岡田嘉夫・絵 角川書店 1990
東海道中膝栗毛 (古典の旅12) 講談社 1990
『源氏物語』男の世界 岩波書店 1991
源氏たまゆら 岡田嘉夫・絵 講談社 1991
古典まんだら うたかた絵双紙 岡田嘉夫・絵 文化出版局 1993
花はらはら人ちりじり —私の古典摘み草— 長谷川青澄・絵 角川書店 1990
新源氏物語 新潮社 1990

評伝作品など

千すじの黒髪 —わが愛の与謝野晶子— 文芸春秋 1975
花衣ぬぐやまつわる… —わが愛の杉田久女— 集英社 1987
与謝野晶子 (群像日本の作家6) 尾崎左永子共著 小学館 1991
ひねくれ一茶 講談社 1992

絵本・童話

かぐやひめ (講談社の絵本30) 長谷川青澄・絵 講談社 1992
ふしぎなひきだし (小学館の創作童話シリーズ43) 小学館 1978
秋のわかれ (ポプラ社文庫) ポプラ社 1985
まごつき一家 (ポプラ社文庫) ポプラ社 1985

その他

古川柳おちぼひろい 講談社 1976
川柳でんでん太鼓 講談社 1985
おせいさんの落語 筑摩書房 1976
大阪弁ちゃらんぽらん 筑摩書房 1978
大阪弁おもしろ草子 講談社 1985
欲しがりません勝つまでは —私の終戦迄— (のびのび人生論2) ポプラ社 1977
おんながつづるおんなのくらし 中山あい子共編 全7冊 筑摩書房 1979-80
炎の女たち —わたしの日本女性史— (集英社文庫) 集英社 1984
花まんだら京都 相馬大共著 浅野喜市写真 光村推古書院 1984
ヨーロッパ横丁たべあるき 日本交通公社 1979
ヒトみな神の主食 —食の文化誌講義— (LECTURE BOOKS) 石毛直道共著 朝日出版社 1981
味 (日本の名随筆12) 作品社 1986
田辺聖子の味三昧 講談社編 講談社 1990
手づくり夢絵本 (講談社文庫) 講談社 1985
お聖千夏の往復書簡 中山千夏共著 話の詩集 1980
苦味(ビター)を少々 —399のアフォリズム— 文化出版局 1982
田辺聖子豆文庫 1〜6 未来工房 1992-93

研究書

女の華やぎ —田辺聖子の世界— 文藝春秋編 文芸春秋 1986