展示

『即興詩人』    アンデルセン, ハンス クリスチャン著;森 鴎外 訳       岩波書店:1969


檀原 みすず助教授 (学芸学部国文学科)  
歌姫アヌンチャタに思いを寄せる青年詩人アントニオの悲恋と世に出るまでを描いた芸術家小説である。

南国イタリアを舞台に、ローマ、ナポリ、ヴェネツィアの名勝、 旧跡と自然のたたずまいがさまざまに点綴され、 紀行文学・教養文学としても楽しめる。 デンマーク語の原作を独訳したレクラム文庫版から鴎外が9年をかけて完訳した。 「原作以上の作品」と言われている。 三島由紀夫は「現代日本人が二度と書くことのできなくなったこの精麗で理知的で詩的な雅文」と呼び、 吉井勇の「ゴンドラの歌」にも影響を与えた。 古式ゆかしい日本語の美しい訳文と、ロマンティクな興趣に酔うことが出来るだろう。