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『謎解き洛中洛外図』 (岩波新書)    黒田日出男 著       岩波書店:1996


堀 裕助教授 (学芸学部日本文化史学科)

 『洛中洛外図』というのは、京都の景観を描いた屏風絵で、 戦国時代から江戸時代の初めに盛んに作られました。 大学図書館にある本(カラー。結構本の種類もあり)を手にとれば、 清水寺や三十三間堂、二条城など、それはまるで観光名所案内のよう。 それだけでなく、床屋さんやお坊さん、 一条戻り橋(?)で「橋占」をする人や遊女まで、 たくさんの人物までも表情豊かに描きこまれ、 400年ほど前の京都の様子が目の前に広がっていくのです。 そんな魅力的な『洛中洛外図』の中でも、狩野永徳作とされ、 上杉謙信に贈られたとされる「上杉本」は大変著名です。 この注目の屏風について、描かれた景観の年代はいつなのか、 描かれた武士は誰なのか、 古文書は信用できるのかなどをひとつひとつ検討しながら、 一体いつ誰が制作を命じたのか、 狩野永徳が作ったという説は疑わしいのか、 どのようにして上杉謙信の手に渡ったのか…次々と謎を解き、 これまでの説を論破していくのです。 「真実は一つ」のノリは、ほとんど名探偵。これも研究(歴史学)の醍醐味か。