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『心の潜在力 プラシーボ効果』(朝日選書) 広瀬 弘忠 著 朝日新聞社:2001
プラシーボとは,外見は本物の薬とそっくりであるが中身は効能が全くない砂糖などでつくられた偽薬のことである。
例えば,新しい鎮痛剤の鎮痛作用を調べるために, 抜歯した患者の半数にはその新薬を投与し, 残り半数の患者にはプラシーボを投与する。 両方の患者の痛みを比較すれば新薬の効能が分かるという訳である。 ところが,薬としては全く効能がないはずのプラシーボが著しい鎮痛作用をもたらすことがある。 このような偽薬による治癒効果のことをプラシーボ効果というが,切開して縫合するだけの偽手術の場合にも, 本当の手術と同様の治癒効果が生じることがあるという。
著者は,プラシーボを「期待や希望を送り込む乗り物」として捉え, 言葉の影響力や心理療法, 伝統医療における治癒効果をもプラシーボ効果として実証的に解明しうる可能性を示している。 心と身体の関係を考えるには最適の一冊である。