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『平安京:音の宇宙』 中川 真 著 平凡社:1992
日本のサウンドスケープ(音風景)を追求したユニークな響きの環境文化論です。
平安京は、どのような音に彩られていたのかといった未知の音世界に、 伴ってくれる本です。扱われる時代は平安時代から室町時代まで。 例えば、茶の湯において、千利休が自らの美意識によって、 それまでの茶事における遊興の音を排除していますが、 管弦・舞に代表される公家・貴族的な趣味からの強い決別の意志によってであり、 それによって市中の山居における「わび茶」を大成していくといった 「第7章 利休が聴いた音」などは、まことにそうだと深く納得される文章です。
著者は音楽学・サウンドスケープ論・インドネシアの地域研究を研究テーマとし、 現在、大阪市立大学大学院文学研究科アジア都市文化学専攻教授で、 大阪を本拠とするジャワ・ガムランと舞踊のグループ「マルガサリ」の主宰者でもあります。