展示
「考古学万華鏡」
石部 正志
新日本出版 2004
小阪:210.2||I71(393230D)
佐久間 貴士(日本文化史学科)
考古学をこれから学ぶ人、あるいは少し学んだ人に良い本が6月に刊行された。新聞に50回に分けて連載されたもので、一節が短く、また分かりやすく書かれている。本学の学生で考古学に興味を持っている人にはおすすめである。内容は旧石器時代から奈良時代までを考古学の視点から通しで書かれている。通史的ではあるけれども、その時代で強調すべきことを、最新の成果から紹介しているので、概説書ではない。旧石器時代は岩宿時代という言葉を使い、日本の旧石器時代後期の特色を世界史的に紹介している。縄文時代の長い期間は、温暖期・寒冷期と関連させながら、日本列島各地の発展の違いを明らかにしている。弥生時代は武器が発達し、王・「クニ」が出現する時代としてダイナミックに描いている。石部氏は古墳時代研究の第一人者なので、古墳時代は氏独自の説を展開し、研究者も注目すべき内容になっている。邪馬台国の首都は桜井市纏向遺跡と考え、古墳時代になってからの邪馬台国の範囲の想定も行っている。また古代王朝の盛衰、天皇陵の真偽に及んでいる。大阪在住なので、大阪や近畿地方の遺跡がたくさんとりあげられているのも魅力である。石部氏は1931年生まれ、元宇都宮大学教授。現在五条市立文化博物館館長。