展示
「文化財報道と新聞記者」
中村 俊介
吉川弘文館 2003(歴史文化ライブラリー173)
小阪:081||R25||173(388837B)
白川 哲郎(日本文化史学科)
新聞の一面トップを学術記事が飾ることなどめったに無い。しかし例外は、考古学・古代史に関する記事。どうして考古学・古代史の記事が、センセーショナルに扱われるのか。現役の文化財担当者である筆者は、新聞は読者の関心に応えるものであり、自らのアイデンティティの具体的表現を求める日本人の欲求に応じた結果とする。そこに浮かびあがってくるのは、日本人に特徴的な歴史意識であり、その形成にはメディアと市民社会、そして国家との「共犯」関係が垣間見える。また筆者は、旧石器捏造問題から飛び火し、死者まで出した聖嶽洞穴問題について、新聞記者として「風化させてはならない悲劇」と訴える。本書は、文化財を対象とするが、広くジャーナリズムに関心のある人にも興味を持ってもらえるのでは。