展示

「仏教とキリスト教の比較研究」(筑摩叢書113)

 増谷 文雄

筑摩書店 1968

関屋:080||C44||113(315380B)

 

高橋 和幸 (国文学科)

 

 著者は二つの宗教に四つの問いを発し、答えしめる方法で本書を書いた、と言っている。

「わたしはいかなる人間であるか」「わたしはなにを願うべきであるか」「わたしはなにに依ることができるか」「わたしはなにを為すべきか」。

 どの職業に就くか、結婚はどうするか等々、確かに我々の人生には問題が山積してはいる。しかし、よく考えてみれば、それらは「生活」の問題であって「人生」そのものの問題ではない。いかに「生活」が困難であっても、その前に大切なのは「人生」の問題ではないか。

 二葉亭四迷「其面影」の主人公が「生活」以前のことに無知無能だったゆえに「生活」も崩壊してゆくように、我々にも「生活」を本当に支えるためには、「生活」以前に宗教・哲学・芸術の、「人生」そのものを問う姿勢がどうしても必要なのではないか。本書を勧める所以である。