文学の作品として残っている日記は大抵の場合、とてもおもしろい。
堅苦しい文章を操って、厳めしく、時には繊細に作品を織り上げていく大先生たちも自らの日記の中では飾り気のない素顔を見せてくれるからだ。
『戦中派動乱日記』は昭和二十四、五年の山田風太郎の日記である。医者の卵だった山田風太郎が順調に原稿依頼を受け、いよいよ作家としてやっていこうかと思っていたあたりの日々である。
山田風太郎を知らないと思う人も不安に思うことはない。彼の作品を知らなくても十分に楽しめる。
日記の中で彼は主に大酒を食らってはべろんべろんになって渋谷駅の穴に落ちていたりする。
そんな彼が徒然に思ったことを書き留めている文章の塊を眺めるのも面白いし、日常で感じるよしなしごとにぽつりと呟く、彼の感想には思わず頬が緩んでしまう。
人の日記読むのって面白いよね、と思う人にはぜひお勧めの一冊である。
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